問題のある社員には一言、「辞めろ」と言って会社に来させなくすればいいのでしょうか。会社でやりがちだけれど、実は問題のある対処についてご紹介します。
1 クビにすればいい
問題があり、扱いづらい社員がいる場合、「クビにして会社から切り捨ててしまえばいい」と思っている社長もいます。
ですが、クビ、つまり、解雇というのは、有効にするための条件がとても高いのです。
法的な言葉でいうと、(1)解雇に客観的合理的理由があることと(2)解雇に社会的相当性があることが必要になります。
(1)客観的合理的理由とは、就業規則上の解雇事由にあてはまり、かつ、解雇を言い渡すに値するだけの問題が社員にあることです。
(2)社会的相当性とは、解雇をする以外の手段がないことを意味します。
この2つの条件が揃うことは難しいのです。ですから「クビだ」と一言言って、解決するわけではありません。
2「明日から来なくていい」
「クビだ」と直接的に言わなければいいのか、というと、そういう訳でもありません。「明日から来なくていい」「お前にやる仕事は無い」など、遠回しな言い方をするのも、良くありません。
会社がクビにするとは明言しないながらも、クビにするのだという意図を察させて、社員の方から会社に来なくなるように仕向けることも、結局は同じことなのです。
3 退職に一筆書かせればいい
会社から一方的に「クビだ」「もう来るな」と言い渡すのがまずいのならば、社員の側に一筆「辞めます」とか「どのように処遇されても異存ありません」とか書かせてしまおう、という発想もあります。社員から、退職に関して一筆もらえば、問題ないのでしょうか。
社員の方から退職の意思を表明する場合にも、退職意思の「真意性」が問題となります。ようは、会社から言われて嫌々ながらに、とか、圧迫を受けて辞めざるを得なくなってという訳ではなく、本人なりに納得して退職を申し出ているといえるのかどうかです。
例えば、「お前のことはクビにするつもりだから、それより自分で辞めた方がいいだろう?」なんて言って一筆書かせたとしても、真意からの退職の意思とはいえません。せっかく一筆書かせたとしても、その退職は無効になります。
4 辞めると言わせればいい
では、問題社員自ら辞めると言うように、本人を説得するのは、いけないのでしょうか。退職を勧めたり、退職するように働きかけることを退職勧奨といいます。
これ自体は適法なことです。
ですが、社員が退職を拒否しているのに、しつこく退職勧奨を重ねてしまうと、違法になってしまいます。毎週のように呼び出して辞めるつもりがないか聞いたり、長時間説得のために拘束したり、「辞めると言うまで帰さない」というような発言はいけません。退職勧奨を行う時は、回数、頻度、時間が度を越したものにならないようにするのはもちろんですが、脅すような言動、叱りつけるような言動、嘘を吐いてだまし討ちのように辞めさるような言動は違法になってしまいます。
会社からクビにできないからといって、社員の側から「辞める」と言うように懸命になりすぎると、違法な退職勧奨を行いやすくなるので注意が必要です。
5 問題社員の特性
そもそも、問題社員というのは、会社にとって扱いにくい人物だから、問題社員なのです。そのような社員を強引に辞めさせようとしても、一筋縄ではいきません。そして、一度「会社が無理矢理辞めさせようとしている」と察知すると、問題社員は頑なになってしまい、それ以後の接し方や辞めさせ方に苦労することになります。
6 まとめ
世の中では、「クビだ」と言ったり、会社がいづらくするような圧力をかければ、社員はかんたんに辞めさせられるというイメージが横行していますが、実際には、そううまくはいきません。日本では解雇に対する規制が厳しいため、最終的に退職に至ったとしても、実質解雇であったと主張されてトラブルになることもあります。
特に現代では、会社からされたことに疑問を持てば、インターネットで検索して、違法であることがすぐに調べられてしまいます。
初動でまずい対応をしないよう、注意しましょう。