あなたの会社にも、辞めさせたいと思う社員はいませんか? 辞めさせたい社員とは、言い換えれば「問題社員」といっていいかもしれません。問題社員に対し、問題は自分にあることを意識させるための対応方法についてお伝えします。
1.問題社員の特徴
- 指導をしてもできるようにならなかったり、聞く気がなかったり指導が全く響かない
- 同僚への影響を考えずに独断で動く
- マニュアルとは異なるが、自分のやり方のほうが周り(一部)に喜ばれていると思っている
- キャリアが長い自分の方が、上司より業務に精通していると思っている
- 年齢やキャリアが自分より上か下かにかかわらず、上司の指示を軽んじている
「うちの問題社員には、どのように対処していいかわからない」。そう頭を抱えているかもしれません。実はこのような問題社員には共通点があるのです。
共通点は、2つあります。
- 会社のルールの重要性をわかっていない。
- 自分のやり方が正しいと思っている。
この2つを理解すると、上手に問題社員に対処することができるようになります。
2.やってはいけない逆効果の対応方法
問題社員に接する際、しばしば見受けられるのが、場当たり的で逆効果な対応です。
・感情的・頭ごなしに怒る
「自分のために怒る。相手のために叱る」という言葉があります。「怒る」とは自分の感情を相手にぶつける「自分のための行為」であり、「叱る」とは相手の問題点や改善点を指摘する「相手のための行為」という決定的な違いがあります。
「そんなこと、言われなくてもわかっている」と思われるかもしれませんが、実際部下の失敗やミスに直面すると、カッとなってしまって「怒って」しまうというケースがしばしば見受けられます。感情的に怒っても、部下は萎縮するか、「うるさい」と思って聞き流すか、あるいは「何でそんなに怒っているの?」と不思議に思うか反発心を抱くだけで、具体的に何がどうして問題なのかが伝わっていないため、指導の効果が表れないのです。
・あなたは間違っていると指摘する
間違っていると指摘するだけでは、自分が正しいと信じ込んでいる人間の心には響きません。また、指摘するのはあくまでも業務上の課題についてのみ。間違いを指摘する際「だからお前はダメなんだ」というような、その人の人格を否定する言葉は絶対に使わないようにしましょう。
・反発された後に指導をやめてしまう
相手からの反発は当然のことと受け止めること。相手は、手を持て余すほどの問題社員なのですから、素直に言うことを聞くことは期待できません。たとえ反発されても、一度で指導をやめないことが肝要です。一度きりでやめてしまうと、自分のやり方がまかり通ると思い込んでしまい、態度を改める機会を逸してしまいます。
3.対応のポイント
では、どのように対応すればよいのでしょうか? 先に示した問題社員の共通項から対応するポイントを導くことができます。具体的には
- 会社のルールの重要性をわかっていない。→①指導を重ねる
- 自分のやり方が正しいと思っている。→②会社の評価を示す ということが挙げられます。
詳しく説明しましょう。
①指導を重ねる
まずは会社のルールを組織内に周知させることが重要です。もしかしたら、明確な業務のルールがなかったり、ルールがあっても、ルール通りに業務ができているかチェックする習慣がなかったりといったケースがあるかもしれません。その場合は、これからルールを定めていくことをお薦めします。きちんとした指導を重ねるために、会社のルールを整理することがとても役に立つからです。
ルールを作成したら、組織内にルールができた背景や目的も併せて伝え「ルールを守らなければ」という雰囲気を醸成させることが大切です。ルールは作ることが目的なのではなく、正しく運用することが目的です。現実的に実行可能なルールにする必要があり、「ルールを守れば、どれだけ仕事の効率が上がるか?」「ルールを守らなければ、どのような最悪の事態が起きるか」について話し合い、ルールが設定されている意味や重要性を論理的に理解できるよう、指導を重ねていきます。 仕事の仕方を理解していない場合も、同様です。普段行っている手順を見直し、正しい手順を指導していきます。たとえ、何度も指導したにもかかわらず、覚えなかったとしても、会社が指導を重ねた実績を残すことが重要で、人事評価や部署異動、戒告、解雇する時にも役立ちます。
②会社の評価を示す
評価というのは、点数という意味ではありません。具体的な行動について、一定の基準を示し、問題社員に対し、その基準に当てはまらないから評価ができないと客観的に伝えることです。そして、具体的に社員にどうしてほしいか(その社員にレベルを合わせるのではなく、会社水準で、どの業務をどのように対応してほしいのか)をきちんと伝えることです。
評価を社員に示すというプロセスは、取り組んでいない企業も多いかもしれません。しかし、具体的な評価を示すことで「自分はできている」と思っている社員や、会社からどう評価されるかに無頓着だった社員でも「このままでは自分は評価されない」「会社に受け入れられていない」と自覚するようになります。これは、頭ごなしに問題を指摘したり、「あなたは間違っている」と言うだけなのと比べると、社員の受け止め方や影響が大きく異なってくるのです。何度も定期面談を設けて評価をし、その間には上長から指導を繰り返すようにしましょう。
4.準備すべきこと
これらの指導、評価にあたっては、次の準備をしておく必要があります。
・業務の指導→業務の種類ごとの手順、チェック項目
この手順やチェック項目に基づいて問題社員の行動のプロセスや考えを確認すれば、問題の根本が見え、適切な対処法をとることができます。チェックリストによるプロセスの可視化は、まだ取り組まれていない会社が多いかもしれませんが、今からでもぜひ取り組んでみてください。例えば作業ミスが多い社員がいるとします。その業務をするのにどのような作業工程があるのか、チェック項目にしておくと、指導する側も抜け漏れなく指導ができますし、ミスをした社員に対しても、自分が同じことでミスを繰り返していると自覚させる効果があります。
・評価の基準→業務の種類ごとに必要となる社員のスキル、態度、その理由にブレがないように。
組織の理念や目指すべき状態や目標を伝え、そこから自分が離れていると納得できるよう論理的かつ冷静に説明することで、問題点に気づいてもらいやすくなります。
・指導録・面談録
いつ、だれと、どのような話し合いを行ったか、記録しておく必要があります。定期面談の際にも活用できますし、戒告等を行う際にも役立ちます。
5.まとめ
評価制度は、健全な組織体制を作る上で必要不可欠なものといえます。制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性も向上し、最終的には企業全体の成長にもつながります。一方、問題社員に対しては、どれだけ逸脱しているか客観的に示し、本人の自覚を促すために、評価基準やマニュアルと照らし合わせることが必要不可欠です。
- 会社のルールの重要性をわかっていない場合
- 自分のやり方が正しいと思っている場合 の2つがあります。
それを踏まえて適切な対応をとるようこころがけましょう。