欠勤や遅刻・早退を繰り返す社員は、他の社員の士気や、業績にも影響を及ぼしかねない厄介な存在です。このような社員になんとか対処できないか? 今回は人事評価に反映させる方法をご紹介します。
1 遅刻・欠勤・早退が目立つ社員への対応方法
遅刻・欠勤・早退を繰り返す社員に対し、対応する方法は次の3つがあります。
(1)欠勤控除(2)人事評価(3)解雇
今回は、(2)の人事評価についてご説明します。
2 人事評価への影響
欠勤や遅刻、早退をすることを理由に人事評価を下げることはできるでしょうか。
労働契約は労務に見合う賃金を支払うものなので、欠勤すると、労務を提供する義務を果たしていないことになります。また、同じ部署の社員に迷惑をかけ、遅刻した社員以外の人の業務をも低下させることにもなるので、一般的には人事評価を下げることが多いでしょう。
このように、会社が社員の勤務態度に応じて人事評価を下げることは可能です。規律を守れない態度や、協調性のなさ、実働(功績)の低さ、失態などを理由に人事評価を下げることになります。
ただし注意しなければならないことがあります。それは、労災による休業や就労の制限、産前産後休業、育児介護休業など権利として認められている休業を不利益に扱うことは禁止されているということです。出勤率や実働の有無に基づく評価は問題ありませんが、休んだことそれ自体や就労時間の制限それ自体に対して、規律が守れないとか、協調性がないと評価してはいけません。
3 人事評価を下げる効果
人事評価を下げるというのは、
(1)降格(2)減給 という2つの側面があります。
職務上の地位(職位)や給料の金額というものは労働契約で約束されているものなので、降格や減給をするためには、きちんとした規定が必要になります。それが人事評価規定です。社内に人事評価規定を定めており、その規定に基づいて評価されること、その人事評価に基づいて職位や給料が変わることを就業規則に規定していれば、人事評価を下げる根拠になります。
人事評価を下げることは、単発の欠勤控除では効き目がない従業員に中長期的な効果があるといえます。また、解雇の前段階の措置にもなります。
4 遅刻・欠勤・早退と人事評価の運用方法
(1)就業規則・人事評価規定の準備
人事評価の運用に際しては、感覚や上長の感情に任せて評価を上げ下げすることのないよう、まず、人事評価規定を定めましょう。併せて、人事評価に基づいて降格や減給をすることを定めた就業規則も必要です。
人事評価の項目については、決められたものはなく、会社の裁量に任せられています。項目としては、協調性・規律性・積極性・責任感・管理能力・経営意識・安全意識などがあり、各項目の達成度や習熟度を3〜5段階で評価するというものが多く見られます。例えば、課長職の職位につくためには、5項目中3項目でA評価を獲得しなければならないというように、各項目の評価をもとに職位や給料を決定します。
項目を作る際には、どのようなことがどの項目に当てはまるのか棲み分けも求められます。具体的には、欠勤や遅刻、早退であれば、規律性や自己管理ができているかという意味の項目に当てはまるでしょう。さらに、頻発する欠勤や遅刻が原因で、他の社員との連携が取れない場合には、協調性もマイナスになります。大事な取引に遅刻した場合には責任感に関する項目に響くでしょうし、それによって会社に不利益が生じれば、営業成績に関する項目のマイナス評価になります。
公正な人事評価をするためには、誰にとっても明確な評価基準を設定することが重要です。
(2)客観的な資料
公正かつ公平な評価のために、客観的な資料を用意することは必須です。欠勤や遅刻、早退の資料、それによって業務に生じた影響の資料としてどんなものが考えられるでしょうか。具体的には、タイムカード、社内の事務連絡、トラブルに関する業務報告、他の社員からのクレームのメールなどが挙げられます。
欠勤や遅刻、早退によって業務に支障が出た場合には、その影響を受けた社員から、なるべく具体的に報告のメールや報告書をあげてもらうのが効果的でしょう。
(3)一貫した運用
運用にあたっては、一貫性が求められます。今回は見逃す、とか、この人だから見逃すというのはいけません。
もし、形式的に対処するのを戸惑う場合、例えば、家庭の事情や本人の病気で欠勤がちになっている場合、遠方からの通勤で交通機関の遅れに巻き込まれやすいなど、会社として寛大に対処したい場合があるのであれば、場当たり的に処理するのではなく、どういう場合なら事情を汲むのか、事前にパターンを想定して、一貫した対処をする必要があります。
5 まとめ
人事評価は欠勤控除と解雇の中間にあたるものといえます。場当たり的な叱責や欠勤控除では改善しない場合にそなえて、人事評価に反映させるような中長期的な対処をすることも大切です。評価策定と運用の際は、公正・公平を心がけましょう。