コラム

無断欠勤の社員を解雇する時のやりがちなミス

社員は会社に日々出勤して仕事をすることが当然である以上、無断欠勤は、会社にとっては許しがたいことです。ですが、怒った勢いで社員を解雇するようなことはしてはいけません。今回は無断欠勤と解雇の関係について、やりがちなミスを取り上げます。

1 解雇と無断欠勤の期間

社員を解雇するには客観的合理的な理由と社会的相当性の2つが必要です。客観的合理的な理由とは、解雇に値するだけの理由があることです。社会的相当性とは、解雇以外の手段がないことです。

無断欠勤が解雇する客観的合理的な理由となるかどうかは、無断欠勤の期間が重要となってきます。つまり、出勤意思がなく、今後も出勤が望めないと判断できるだけの期間、無断欠勤をしていることが条件で、概ね2週間は必要です。そして、欠勤が開始した前後の経過や欠勤の理由によっては、単に2週間の期間が経過しただけでは解雇できません。

2 無断欠勤の理由の確認

雇い主(使用者)は、無断欠勤の理由や出勤意思の有無を本人に確認する必要があります。これは、ある裁判例で、元々統合失調気味であった社員が会社で不合理な扱いを受けたことをきっかけに無断欠勤するようになったことについて、会社はその社員が病気の影響により本人の意思とは関係なく出勤できない状態であるかもしれないと知っていたのだから、欠勤の理由を探るべきだったと判断されたからです。

そのため、会社は、本人や家族へ定期的に連絡を取ったりして、本人の無断欠勤の理由が、本当に出勤する気がなくなってのものなのかを確認しなければいけません。もし、欠勤の理由に、それ以外の理由、つまり、病気や社内のハラスメントなど、本人の意思とは関係なく出勤を妨げている理由があるのであれば、会社はその理由に応じた対処を尽くさなくてはならないのです。

3 傷病と欠勤

欠勤の理由が病気や怪我である場合、まずは社内に病気休職する制度があるかどうかを確認します。制度がある場合にはそれを利用させましょう。

では、もうそのような制度が全くない場合はどうするか。即解雇にできるのでしょうか。

休職の制度は、解雇の猶予制度だとされています。本来であれば解雇してもおかしくないところを、休職で解雇を回避しているのです。休職後に無事復職できれば、解雇されることはありません。では、休職制度がないなら、即解雇していいかと言うと、そうではありません。本来の解雇の仕方に立ち返り、解雇の条件(客観的合理的理由と社会的相当性)を満たしているかを検討しなければいけません。

過去の裁判例でいうと、通常の4割程度しか出勤できない状況が続き、その状況から脱する見込みが立たない場合には、解雇を有効とする傾向にあります。逆に言うと、業務の量や出勤の頻度を軽減すれば仕事を続けられ、本人もそれを希望している場合や、重篤なケガや病気であっても治療によって回復の目途が立っている時には、解雇はできないと思いましょう。

4 逮捕と欠勤

社員が痴漢や傷害などで逮捕され、会社に出勤できなくなった場合には、解雇になるのでしょうか。世間的な感覚では、刑事事件を起こすこと自体がけしからんことですし、それで会社を欠勤する訳ですから、解雇して当然のように思えます。ですが、法律的にはそうではありません。

まず、逮捕されたといっても、法的にはその人が実際に犯罪をしたのかどうか決まっていない状況です。判決が出るまでは無罪推定があるからです。ですので、逮捕されただけで犯罪を行ったとして解雇することはできません。

また、本人が罪を認め、実際に有罪となっても、それだけでは解雇できません。犯した罪が人を死傷させるような重大なケースや、横領のような会社に背くようなもの、会社の業務の性質に反する(清廉性を重んじる職業での犯罪行為)ものであるなど、一定の重みや理由のある犯罪でないかぎり、解雇は認められないのです。

また、逮捕されたと言っても、必ずしも、ずっと自宅に帰れない訳ではありません。3日後、10日後、20日後、約2か月後など、釈放や保釈といって、身体拘束を終えて自宅に帰れる可能性やタイミングがあります。自宅に帰ってしまえば、普段どおり出勤できるわけです。

このように見ると、逮捕されたことを理由に解雇できる場合は、かなり限られることになります。

5 ありがちなトラブル

よくあるトラブルとして、突然社員が出勤して来なくなり、連絡を取ろうとしても不通で、そのまま辞めたことにしたら、1年くらい経ってその社員が「不当解雇された」と訴えてくることがあります。会社としては、そんなバカな話があるか、という感じですが、辞表や退職合意書など、自分から辞めていったという証拠がない以上、裁判では会社も苦しい立場になります。

では、このような状況で、会社としては何をしておくべきだったのでしょうか。それは、長期にわたって相手に出勤意思を確認する連絡を取り続けることです。1週間や1か月で諦めてはいけません。念には念を重ねて、2か月くらいは定期的に連絡を取って、出勤しないのかどうか、今どうしているのかを確認しましょう。また、2か月を過ぎても、半年くらいの間は月に1回程度は連絡を取ると万全でしょう。連絡を取るとは言っても、相手は音信不通なわけですから、電話ではなく、メールや手紙など、かたちの残るものにしましょう。手紙の場合は中身をコピーに取り、追跡番号がつくような方法で送りましょう。

6 まとめ

無断欠勤が解雇理由になるのは、無断欠勤がけしからんことだから、というよりも、今後の出勤が望めないからです。早急に結論を出そうとせず、状況を見て、今後その社員が出勤してくることが望めないといえるのかを判断しましょう。

   
    
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