欠勤・遅刻・早退は企業のルールが乱れる入り口です。これにきちんと対処することは、ルールを形骸化させないためにとても重要です。今回は、欠勤・遅刻・早退に対処するために必要な就業規則のルールについてご紹介します。
1 就業規則の重要性
10人以上の従業員を常用する使用者は就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。10人未満であると未作成の会社もありますが、そうすると会社の権限はかなり限定されます。欠勤の届出方式など、会社独自のルールを作るのに就業規則は必要になります。その他、欠勤控除や懲戒など、企業秩序を保つための対応も就業規則がないとできません。いわば就業規則は会社のルールブックといえるでしょう。
2 欠勤の届出制の規定
欠勤・遅刻・早退を適正に管理するために相応しいのは届出制です。どのような理由があっても、欠勤・遅刻・早退をすることを事前に届出ないと、無断欠勤したということにできるのが、届出制にする効果です。逆にいうと、日頃から届出制を徹底していないと、たとえ無断で欠勤しても、咎めることができなくなります。
欠勤する時は事前に届け出なければいけない、そういう会社のルールを作り、無断欠勤をルール違反化するためには、就業規則に届出制の定めをすることが必要になります。
3 欠勤控除の規定
欠勤控除とは、欠勤・遅刻・早退があった場合に、その働かなかった時間分だけ、給料を引くことです。欠勤控除は必ずしなければいけないと法律で決められている訳ではありません。自分の会社で欠勤控除を実践したいのであれば、それをルールブックたる就業規則に書いておく必要があります。
ノーワーク・ノーペイの原則から、就業規則に書いてなくても欠勤の控除は当然行えるという考え方もありますが、給与を減らすという従業員に不利な措置を取る以上、就業規則の定めは必要だと考えた方がいいでしょう。
4 懲戒の規定
懲戒も就業規則に規定がないとできません。欠勤・遅刻・早退という会社からすると目くじらを立てたくなる行為でも、就業規則がない限りは懲戒ができないと考えてください。懲戒ができないということは、記録上は懲戒歴がなく、問題のない社員ということになってしまいます。モラルに反する行為をくりかえす社員が何の罰則も受けずに居座り続けたら、会社全体のモラルと意欲低下につながりかねません。就業規則には、懲戒の種類、種類ごとの懲戒事由、懲戒を実施するための手続きを必ず規定しましょう。
5 くりかえしの実践の重要性
せっかく就業規則があっても、形骸化していては意味がありません。形骸化とは、就業規則に書かれたルールが実践されていないことです。たとえば、欠勤は事前の届出制となっているのに、届出のない無断欠勤が横行していたり、上司にあたる立場の人間では届出なく休むことが当たり前になっていたり、無断欠勤が重なり懲戒事由に該当するのに、懲戒がされずに長年見過ごしてきていたりすることです。
就業規則のルールが形骸化していると、いざ、ルール違反で何か対処しようとしても、今更責任を問うたり、罰したりすることができなくなります。
日々、就業規則のルールを実践し、ルール違反には指導をし、指導を聞かず再びルール違反があれば懲戒し、徐々に懲戒を重くしていく、地道な対処が必要なのです。
6 まとめ
多くの中小企業では、就業規則が作られていないのが実態です。ですが、就業規則がないと、何か問題が起こったときのツケが会社に回ってくるので、注意しましょう。
就業規則は、トラブルが発生した時の切り札になることがあります。
まだ作成義務がない会社を経営している場合でも、自社に合った就業規則を作成し、会社のルールを明文化しておくことをおすすめします。