コラム

新卒・中途採用で失敗しない、能力不足で解雇しないための採用ポイント

新卒・中途採用を問わず、一旦従業員を採用すると、解雇や自主退職で辞めさせるのは非常に困難です。能力不足での解雇を生まないためにも、採用時のミスマッチを防ぐことが大切です。企業側として事前に把握しておきたいポイントをご紹介します。

1 新卒採用での備え

新卒採用と中途採用では、採用時に会社が求めていることも、解雇の時に必要な要件も異なります。ですから、新卒採用と中途採用では異なる対応が必要になります。

(1)新卒採用と解雇

新卒採用した従業員を能力不足で解雇する場合、会社があらゆる手を尽くし、時間をかけて指導したけれど、どの部署でもものにならず、極めて能力が不足していたといえることが必要です。裁判例の言葉を使うと、「能力不足が著しく、改善の見込みがないこと」が求められるのです。

イメージしやすいように言うと、新入社員ですから、最初は何もできない状態です。何ヶ月、年単位で指導をし、時には1対1の指導や研修を重ね、部署異動などで適正を探り、それでも仕事のミスを連発したり重大なミスを犯したりするような場合でなければ、解雇はできません。

このようなミスマッチが起こらないように、新卒採用の時に会社の求める人材のイメージを明確にしておくことが大切です。

(2)業務内容を知らせる

新卒採用のミスマッチでよく起こるのが、業務内容の認識の違いです。新卒採用された従業員からすると「こんなことまでするとは思わなかった」という業務が多発すると、急激にやる気を失い、生産性が下がる要因にもなります。ましてそれが適正のない業務の場合、能力不足と評価されてしまうのです。

採用時に全ての業務の種類や手順を説明することは難しいですが、「うちは〜〜業をやっていますよ」という説明だけでは不親切です。入社前の採用段階で、入社後の仕事のイメージが膨らむような説明を行うことが重要です。中でも離職の原因になりやすい業務や習得に苦労する業務は予め伝えておくほうがいいでしょう。

「そんなことを言ったら応募を辞退されてしまう」と思うかもしれませんが、採用時に良いことだけを説明しても、短期間で退職者を出す他、足を引っ張る従業員を生む結果になってしまいます。採用前に辞退される方が、採用後より会社側としてはダメージが少ないのです。

(3)必要とする人物像を知らせる

会社の業種や業務内容、他の社員の年齢や特性によって、会社に定着しやすい人は変わります。例えば、リフォーム工事業者であれば、職人としての技術はもちろん、客先の自宅に訪問するわけですから、身だしなみや礼儀のある振る舞いも大切になります。

逆にいうと、このように一見些細なことに思える要望でも、いざ雇ってみた従業員ができないとなると、こんなこともできないのか、と能力不足を感じる原因になります。

面接で必要な人物像を見極められるよう、自社にどのような人が向いており、どのような人材を求めているのか、採用時に伝えることが、採用のミスマッチと能力不足の従業員を生むのを防止する大きな手立てになります。

(4)会社のビジョンの明確化

自社がどのような業務を行っており、どのような雰囲気で具体的にどんな事業目標を持っているのか、どのような従業員を理想とするのかを明確にし、そのビジョンに合った人材を採用することが、従業員への能力不足の不満を防止することになります。

そのためにも、採用段階で入社後のイメージが描けるような説明をすることはもちろん、会社の思いを伝えることは欠かせないでしょう。

意外と採用の時は、「良い人がいたら採用しよう」「これから育てればいいか」と印象任せになりがちです。採用するかしないかを決める前に、自社のビジョンを明確にしておくことが大切になります。

2 中途採用での備え

(1)中途採用と解雇

中途採用の従業員を能力不足で解雇する場合、新卒採用の場合と同様に、雇用を継続できないほどの能力の欠如を理由とすることもできますが、中途採用の際に前提条件としていた特別な能力がないことを理由とすることもできます。

即戦力としての活躍が期待される中途採用の場合は、「ある特別な能力があることを採用の条件にしていたといえるか」ということがキーポイントになります。

(2)能力を試験する

中途採用の場合、単に職歴や前職での経験を聞き取るだけでは、特別な能力を前提として採用したとはいえません。

業務に必要な資格の保有を採用条件にする他、採用時に能力試験を実施するなどして、会社が能力前提での採用をしていることを示すといいでしょう。また、募集時の条件、雇用契約書などに資格保有者であること記載するなど、能力前提の採用であることがわかる工夫が必要です。

(3)契約条件を明確にする

ある特別な能力があることを前提として、その条件をクリアした人を採用したのであれば、当然、それに見合った待遇を与えているはずです。

募集時の待遇の記載、採用後の雇用契約書の待遇の記載はどうなっているでしょうか? 中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

例えば、専門部署に配属する契約にしていたり、管理職などの肩書きを与えていたり、能力手当などの手当を与えるなどして、契約条件で明確に一般的な社員との差別化を図りましょう。

(4)会社の求める能力の明確化

採用時に能力を図り、採用後に能力に見合った待遇を与える、そのような能力採用を行うためには、会社がどんな能力を求めるのか、その能力に対してどれほどの対価を与えるのかを採用前に明確にしておく必要があります。

まとめ

採用した従業員に能力不足を感じる原因に一つには、採用時のミスマッチがあります。その多くは、開示している情報が少ないことや、面接で見極められないことが原因となっています。

自社が求めるのはどのような人材なのか、能力のレベルや人柄など、求める人物像を明確にし、そこから逆算した採用をするのが好ましいでしょう。

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