コラム

深夜残業ってこんなに高くつく、その計算方法のからくり

残業代は、長時間働いたときに支払われるものというイメージでしょう。残業代とひとくちに言っても、時間外労働手当、深夜労働手当、休日労働手当という3つの種類があります。今回は深夜労働手当、いわゆる深夜残業についてご紹介します。

1.深夜残業は高くなる

深夜労働手当、いわゆる深夜残業は高額になるイメージがあると思います。アルバイトなどでも、夜中 のシフトの人は時給が高くなりますよね? その正体が、実は深夜労働手当にあるのです。

なぜ深夜残業代は高くなるのでしょうか? 深夜残業には、通常の給料より割増した賃金を払うことが企業に義務づけられており、たとえ1分であっても、割増がつくこと、そして、他の残業代との組合せで割増率が高くなるからです。深夜残業代の計算の仕方を正確に把握していないと、未払残業が生じてしまうので、きちんと確認していきましょう。

(1)深夜残業とは

夜中の22時から早朝5時までに行う労働は、深夜残業になります。深夜残業には、深夜残業用として割増した給与を支払うことが定められています。「残業」と言いつつ、働いている時間が短時間であったとしても、たとえ1分であったとしても、必ず深夜残業用の割増をつけなければいけません。

(2)深夜残業の基本の割増率

夜中22時から早朝5時までの労働には、深夜残業代がつきます。

深夜残業の基本の割増率は25%です。時給1000円の人の場合、深夜22時から早朝5時の間に勤務すると、時給が1250円になります。

(3)時間外労働との組合せ

深夜残業代と時間外労働手当(いわゆる残業代。長時間働くとつくものです)の両方がつくことがあります。それは、深夜22時から早朝5時までの間に勤務しており、かつ、一勤務の労働時間が8時間を超えているような場合です。

具体的に例を挙げてみましょう。11時から23時まで勤務したとき(12時間労働)や、22時から翌日8時まで働いた場合(10時間労働)がそれにあたります。

労働時間が8時間を超えているため、時間外労働手当がつきます。それに加えて、22時から5時までの時間帯に勤務しているので、深夜残業代もつくというわけです。

深夜残業代と時間外労働手当の両方がつくときには、割増率は50%になります。従って、時給1000円の人の場合、割増後は時給1500円という計算になるのです。

(4)60時間超え残業との組み合わせ

深夜残業代と時間外労働手当の両方がつく場合で、さらに割増が大きくなる場合があります。それは、従業員のその月の残業時間が60時間を超えている場合です。その場合、時間外労働手当の割増率は50%と定められています。そのため、深夜残業代の割増率25%と組み合わせると、なんと75%増になってしまいます。

時給1000円の人の場合、一日の労働時間が8時間を超え、かつ、その月の残業時間が60時間を超えている状態で22時から5時の間に勤務があると、すべての条件が重なる時間の時給は1750円になります。

(5)休日労働との組み合わせ

企業は従業員に週に1日は休日を与えないといけません。その1日の休日に勤務をさせた場合、休日労働手当をつける必要があります。休日労働の割増率は35%です。そして、休日労働が深夜残業と重なった時は、深夜残業代の25%の割増も加わります。つまり、60%の割増をしなければいけないのです。

時給1000円の人の場合だと、休日労働と深夜残業が重なった時の時給は、1600円になります。

(6)種類ごとの時間管理を

残業代には、深夜残業手当、時間外労働手当、休日労働手当の3種類があり、それぞれ、割増率や扱いが異なります。そのため、労働時間と給与計算を管理する時は、この3つを種類ごとに計上しましょう。これを怠ると、残業代計算に誤りが生じ、未払い残業代が発生する原因になってしまいます。専用の給与計算ソフトを使っている場合には、きちんと区分して入力されるので心配はいりませんが、計算ソフトを使ってない場合や、簡易な計算ソフトを使っている場合には、適切に計上されないこともあるので注意が必要です。

2.高額になる傾向

深夜残業代がつく場合、未払い残業代の請求が高額になる傾向があります。深夜残業代それだけでは、割増率は25%と、普通の残業代(8時間超えで働いた時の時間外労働手当)の割増率と変わらないのですが、深夜残業の場合、労働時間の長さにかかわりなく、深夜22時から早朝5時までの間に勤務があれば、必ず25%増の深夜残業代がつきます。普通の残業代が、8時間労働を超えないとつかないのに対して、大きな違いがあります。

また、深夜残業は、他の残業と組み合わさっていることが多いです。例えば、日勤に続き夜勤をする場合や、深夜のシフトが長く、8時間以上に及ぶ場合など、労働時間が8時間を超えてしまうと、時間外労働の手当25%と合わせて50%増しになるケースが多くみられます。

3.休憩の考え方

休憩時間は労働時間に含まれません。出勤から退勤まで、長時間拘束されていたとしても、休憩時間をたくさん与えていれば、労働時間が短くなるため、残業代の発生を防いだり、給与のコストカットにつながったりすることがあります。

深夜労働の場合、人の動かない時間帯ですから、暇な時間が発生することがよくあります。ですが、暇にしていてほとんど作業していない時間や実働がない時間があっても、それを休憩時間にカウントしてはいけません。 休憩時間とは、労働から解放されている状態のことを言います。労働から解放されているので、何をしていてもいい、どこにいてもいい、という状態です。たとえ深夜労働で暇にしていたとしても、流石に持ち場から離れるわけにはいかないでしょうし、少なくても人や仕事が来れば、すぐさま対応することになっているはずです。このような状態では労働から解放されているとはいえないので、休憩扱いにしてはいけません。「今日は暇で全然仕事がなかったから」といって、勝手に休憩時間にカウントしてしまうと、深夜残業代を正しく払っていないことになり、残業代の未払いが生じてしまいます。

4.雇用契約書の記載に注意

特に、シフト制により深夜専門で働かせる場合などは、時給や基本給の案内の仕方に注意しなければなりません。例えば、「時給1250円」と記載されていた場合、この「時給1250円」が深夜残業代込みでの割増後の金額なのか、あるいは、この金額にさらに深夜残業の25%増が行われるのか、明確になっていません。

もし、1250円は割増前の時給で、深夜残業の場合にさらに25%増しなければいけなくなると、会社は残業代の未払いで痛手を負うことになります。そのため、案内する際は「時給1000円、深夜の場合1250円」「時給1250円(深夜割増を含む)」と記載するなど、一工夫が必要になります。

5.まとめ

深夜労働は、日中に比べ、身体面に負担が生じやすい上、通勤や安全面においてのリスクも高くなることから、割増賃金が義務付けられています。しかし、深夜残業については、あまり忙しくない時間帯ということもあり、会社の管理がゆるみがちです。放っておくと、いつの間にか未払い残業代の温床になってしまうので、日勤の時間管理と同様に、目を光らせる必要があるでしょう。



 

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