コラム

モンスター社員を最短最速で辞めさせる方法

会社にとって悩みの種であるモンスター社員。モンスター社員を辞めさせたい、できれば早く辞めさせたいと考える時、会社にとって最も有効な手段はなんでしょうか。リスクを避け、着実にゴールにたどり着く方法をご紹介します。

1 2つの道筋

まず、モンスター社員を辞めさせる方法を考えたとき、2つの方法があることを押さえておきましょう。

(1)解雇

1つ目は解雇です。解雇は会社が一方的に社員を辞めさせる方法で、法的に有効な解雇をするためには、かなりハードルが高いのです。解雇を成功させるためには、解雇に値するだけの重大な理由があり(客観的合理性)、解雇以外に他にとる手段がない(社会的相当性)という2つの条件を満たさなければなりません。ですから、解雇はあくまで最終手段と考えてください。

(2)自主退職

2つ目は、自主退職です。つまり、社員からの申入れで退職したり、社員と会社が合意して退職する方法です。

モンスター社員を辞めさせたいと考えたとき、まっさきにイメージするのは解雇ですが、解雇は成功のハードルが高く、最初に取るべき手段ではありません。まずは自主退職を目指しつつ、その過程で解雇を成功させるための材料を集めるのが、一番の近道です。

(3)速さのちがい

仮に、解雇した場合、辞めさせるのは一瞬です。それに比べて、自主退職を目指す場合、そのための準備期間が必要になるため、数か月~1年程度の期間がかかります。一見、最短最速で辞めさせるためには、解雇の方が優れているように思うかもしれません。ですが、解雇を選択した場合、解雇された社員から訴訟を起こされるリスクが伴います。しかも、解雇は成功するハードルが高いため、訴訟をした結果、会社が負けてしまい、結局モンスター社員が会社に復職したり、その間の給与を払わなければいけない(実際には働いていないのに)可能性もあります。

最終的な決着が着くまでの道のりで考えると、自主退職の方が圧倒的に優れているといえるのです。

(4)具体的なステップ

では、最初に自主退職を目指す場合、どのような手順を踏むべきでしょうか。それは、モンスター社員の問題点をモンスター社員自身に自覚させることです。モンスター社員は、少なからず、自分の問題行動に鈍感です。自分に問題点がないと思っている状態で「辞めてくれないか」という話をしても、うまくいきません。モンスター社員の問題行動を自覚させる、そのための証拠を集める、指導を重ねる、人事面談を行い、時には懲戒する。それが結果的に解雇を有効にする材料集めになってきます。

2 証拠の収集

モンスター社員の問題行動があった場合、その証拠を集めることは2つの意味で重要です。

1つ目は、モンスター社員の説得のためです。モンスター社員というのは、周りから見れば問題行動が多いのですが、本人はそれを自覚していなかったり、大した問題じゃないと思っていたり、他人のせいにしていたりします。そういう人に言葉だけで指摘しても、問題があること自体を否定されてしまいます。そこで、具体的な証拠を示して問題点を指摘するようにします。その際、注意しなければならないのは、あくまで問題点の自覚を持たせるためですので、吊るしあげて糾弾する意図で臨まないようにすることです。

2つ目は、懲戒や解雇のための証拠とするためです。モンスター社員に問題点を自覚させようとしても、成功しない場合もあります。そのような場合、並行して問題行動に対して懲戒をしたり、後々に解雇に至る可能性があります。それに備えるという意味でも、問題行動を記録化して、証拠とすることは重要です。特別な準備なくできる行動としては、問題行動があった場合に関係する部署から報告書を出させるとか、問題社員本人に始末書を書かせることでも、証拠となります。

3 指導の実績

モンスター社員を退職させるためには、モンスター社員に対して指導をすることも、2つの意味で重要です。

1つ目は、指導を重ねてモンスター社員に自身の問題を自覚させることです。素直に受け止めることは期待できなくても、何度も呼び出され、指導されると、会社が自分の行動を問題視していることは認識するでしょう。このような働きかけを通じて、自分のやり方では会社で認められないことを自覚させることによって、「辞めてもいいか」という考えを持たせ、合意退職につなげるのです。この時、狙い撃ちや決めつけによってモンスター社員を吊るし上げているような雰囲気を出さないことが大切です。そのような雰囲気があると、問題を自覚するどころか、自分が不当に扱われていると考えて、余計に意固地になり、合意退職から遠ざかります。

2つ目は、懲戒や解雇を有効にするためです。出勤停止や降格などの重たい懲戒をする場合や解雇をする場合、それまでの会社の指導実績も重視されます。つまり、会社が再三にわたり指導をしているのに、それでも問題行動を重ねたということが、重たい懲戒や解雇をしてもやむを得ないだろうと判断させることになるのです。

いつ、どんな指導を行い、モンスター社員からはどんな回答があったのかを記録しておくことも、証拠になります。

4 人事面談

人事面談は、指導よりも一段階重たい手続というイメージです。人事面談を行う効果については、指導と重なります。

上長や指導係による指導を行っても、功を奏しない場合、会社がより本気度をもって取り組んでいることを示すために、面談を実施することが有効です。面談の際には、日頃指導にあたっている担当者と共に、それよりも更に目上になる人物を同席させましょう。

面談では、問題行動の指摘、会社からの評価、モンスター社員の意見の確認を行うとともに、このまま改善が見られない場合、どのような措置が予想されるのかを説明しましょう。ここでも攻撃的にならないように、証拠に基づき、冷静に説明しましょう。

問題行動が繰り返される場合に予想される措置として、懲戒や降格、減給、話し合いでの退職(合意退職)、解雇などがあります。どの手段を取るかは、問題行動の重大性やこれまでの回数、改善傾向があるかによって異なります。

5 懲戒

指導をしても改善が期待できない、改善が見られない場合や、指導の効果を判断するまでもないほど重大な問題行動があった場合、懲戒を実施します。

懲戒の種類は、軽い方から、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇です。この中から、会社の就業規則に定めてあるもののみが実施できます。そのため、そもそも就業規則がない場合には、懲戒を実施できません。就業規則を作成してから、その後に起きたことに対して懲戒をしましょう。

どの種類の懲戒を実施するかは、就業規則のどの懲戒事由にあてはまるのかによりますが、複数あてはまるものがある場合は、より軽いものを選択するのが安全です。また、以前に懲戒実績がある場合には、徐々に懲戒を重くしていくようにします。以前に懲戒処分を受けたことがあるということは、懲戒をしてもなお、問題行動が改められなかったということなので、より重い懲戒を実施する時や解雇を行う時に、会社にとって有利な事実となります。

6 まとめ

モンスター社員に悩まされている会社では、会社の方が委縮してしまっていたり、解雇に急いだりしてしまいがちです。しかし、対処方法を誤ると、会社側が法令違反の責任を問われる可能性があります。きちんと手順を理解し、着実に進んでいくことがなによりも確実な近道であると心得ましょう。

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