勤務態度や言動、仕事の出来に著しい問題があるモンスター社員。このような社員を放置しておくと、他の社員に悪影響を及ぼし、最悪の場合、組織の崩壊につながりかねません。モンスター社員の言動に会社が振り回されてしまわないように、実践できる対応方法をご紹介します。
1 反論への対処
モンスター社員が問題を起こした時、注意したり指導したりしようとしても、反発を受けることがあります。大抵は、少し的外れの言い分なのですが、一理あると思えるような言い分が含まれていて、言いくるめられてしまう時があります。あるいは、激しい剣幕で反発されて、怯んでしまうこともあります。そうすると、段々とモンスター社員には触れたくない、注意したくない、関わりたくないという雰囲気が醸成されてしまい、なおさら好き放題にさせてしまうことにつながります。
では、モンスター社員の反論に振り回されないためには、どうすればいいか。そのためには、会社のルールや考え方の基本線や本質をしっかりと把握します。それを軸にして、モンスター社員の言い分のズレている点を押さえるようにするのです。
「会社のルールはA。あなたはAができていない。あなたはBと言っているけれど、それはAではないことの言い訳にならない」というように、会社のルールとモンスター社員の独自の見解の2つを押さえることが基本です。
たとえば、モンスター社員がルール違反をしていて、注意をしたら、「他の人も以前にルール違反をしていた」と反論されたとしましょう。こういう場面で、モンスター社員だけを注意するのは、公平じゃない気がして指導を躊躇うかもしれません。ですが、以前に他の社員のルール違反が見過ごされていたとして、今後もずっとルール違反を指導できなくなるのかというと、それは別問題です。「あなたがルール違反をしたことには変わらないから、注意する」というのが正しい方向性です。その上で、「いつ、誰がルール違反をしていたのか?事実ならその人にも注意をしておく」と言うと、大抵は曖昧な答えをするか、覚えていないと言います。そうすれば、「じゃあ、次に別の人が違反していた時には注意する」と言えばいいのです。無闇に言い逃れのための嘘だと決めつけて追及するのはやめましょう。
2 冷静・公正な態度
モンスター社員は会社や指導にあたる上司と敵対しがちです。既に敵対関係ができていたり、内心嫌っていても、目の敵にしたような態度を取らないことが大切です。なぜなら、こちらが感情的になってしまっては、ついつい厳しすぎる対処をしてしまったり、本当は問題ではない行動なのに罰してしまったりして、正しい対応を見失うからです。
冷静・公正に対応できているか自信がないときは、他の社員が同じことをしたとしても、同じ様に対応するのか、自問してみましょう。
そして、冷静・公正な対応を取るためには、会社のルールの基本を理解することです。なぜそのルールを守らなきゃいけないのか、どういう場合を想定したルールなのかを把握しておけば、モンスター社員の言動がルール違反にあたるのか、どの程度重大なルール違反なのかを把握しやすくなります。そうすると、違反の有無、程度に合わせた冷静な注意や指導ができるようになります。
3 指導を重ねる重要性
モンスター社員は指導しても聞かないから、手っ取り早く、指導よりももっと厳しい処分をしたいと思うかもしれません。厳しい処分とは、具体的には懲戒処分や降格、減給、解雇などがあります。ですが、最初から一発で厳しい処分ができるわけではありません。判例では、厳しい処分に至るまでに会社が指導を尽くしていたのかを重要な要素として判断しています。
また、モンスター社員の中には、問題行動であるという自覚がなく、改善方法がわからないという人がいることも事実です。
一発で厳しい処分が行えない以上、目下、指導を重ねるしかありません。丁寧な指導により問題行動が改善される場合もありますし、指導を重ねることが、後に処分を課すことになった時に、会社にとって有利な事情になるのです。
4 規定の確認
これまで確認してきたように、会社のスタンスを固めることが非常に重要であることが理解できると思います。では会社のスタンス、基本的な考え方を固めるにはどうすればいいのでしょうか。
それは、会社の規定をきちんと確認することです。会社の規定とは、就業規則や内規など、文書化されている会社のルールのことです。そして、規定を確認するとは、流し読みすることや丸暗記するということではなく、それらの規定によって会社が社員に対し、どんなことを守らせようとしているのか、それはなぜなのか、規定の趣旨を理解することです。
といっても、少し想像するのが難しいかもしれません。まずは、モンスター社員の言動で困っていることからひも解いてみるといいでしょう。モンスター社員の行動はどの規定に違反しそうなのか、モンスター社員からどんな反論をされそうなのか、その規定はどんな範囲の物事を補足していて、それはどうしてなのか、考えてみると一助になります。
5 証拠の確保
ここまで、日常での対応の仕方、指導をする時の基本姿勢をご紹介しましたが、日常業務の中でも、モンスター社員の問題行動について、証拠を残せるのであれば、残した方がいいです。なぜなら、指導では改善がみられず、いよいよ懲戒処分や降格、減給、解雇等の措置を取る場面になった時、これまでにどんな問題行動が積算されているのか、会社はどんな指導をしてきたのかが、会社の処分を有効にするための、有益な証拠になるからです。
証拠といっても、常に録音や録画撮影をしなければいけない訳ではありません。比較的簡単に取り掛かれるものとしては、問題行動があった時に、それを目撃した社員からメール等で報告をもらったり、モンスター社員を指導した時に指導録をつけたり、始末書を書かせることから意識しましょう。
6 まとめ
モンスター社員はその名の通り、厄介な社員ですから、会社の方が尻込みしてしまい、誰も手が付けられない状態になっていることも少なくありません。しかし、必要な注意や指導を行わず放置してしまうと、より深刻な事態を招いてしまうことになります。会社のルールさえきちんと押さえていれば、実はモンスター社員はそれほど臆する存在ではありませんので、問題が小さいうちに、冷静かつ迅速に対処しましょう。