モンスター社員とは、どのような存在か? 正式な定義はありませんが、職場での勤務態度や言動、仕事の出来に著しい問題がある社員のことを指します。どんな社員がモンスター社員なのか、どんな社員なら法的に問題があるラインといえるのか、3大ポイントをご紹介します。
1 【ポイント1】規則や命令への違反
単にわがままな性格なのか、法的に問題のあるモンスター社員なのかを区別するポイントのひとつが、会社が明示する規則や会社から出された命令に違反しているかどうかです。
会社の就業規則やその他の服務規定などの内規、会社が発した業務命令などは、会社で働く社員である以上、従わなければいけないルールです。その明示的なルールに従わないということは、その社員に問題があるといえるでしょう。
ただし、会社のルールというのは、明白なものでなければいけませんし、ルール自体が正しいものでなければいけません。例えば、就業規則や内規にはどこにも書かれておらず、暗黙のうちに守られていたような慣習に違反する行為があったとしても、それで社員を責めることはできません。また、「始業前に朝礼に参加しなければならない」という規則が制定されていたとしても、始業前に労働や義務付けをすることはできませんから、間違ったルールに反発したとしても、それは社員の非にはならないのです。
2 【ポイント2】頻繁な遅刻・欠勤
遅刻や欠勤というのは、一部の時間を労働せずにいるわけですから、社員として労働を提供する義務に明確に反していることになります。
では、数回遅刻をしたり、たまにする欠勤で社員を罰したり、不利益な扱いをしていいかというと、そうではありません。遅刻や欠勤をしたら、その分、基本給が引かれるというのが本来ですから(欠勤控除)、それで見合った不利益を受けているといえます。給料を引くよりも大きな不利益を与えるためには、遅刻や欠勤が度を越して頻繁でなければいけません。
このポイントに当てはまる社員として、過度な勤務怠慢もあります。サボりや手抜きの多い社員です。勤務怠慢の社員の場合、サボって仕事をしていない時間があることが明白で、手抜きが著しい程度でないとモンスター社員とはいいがたいです。数分のサボりやちょっとした仕事の雑さについては、まずは会社が指導を徹底して対策することが求められます。モンスター社員といえるためには、会社の指導が尽くされているのに、それでも労働能力として明白な不足がある場合と考えましょう。
3 【ポイント3】暴力・暴言
モンスター社員として明白なポイントになるものとして、暴力や暴言があります。このタイプは職場でのハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)に発展していることもあり、職場環境へ影響は甚大です。
職場内で暴力が許されないことは当然です。一方で、暴言については、どの程度の暴言があるのか、少し注意しましょう。パワハラの定義(業務上必要かつ相当な範囲を超えた行為か)からすると、仕事上で暴言を使う正当性はありません。一方で、社員の指導中に多少語気が強くなるような程度であれば許されるという裁判例もあります。暴言については、前後の状況からして明らかに不必要で度を越した言動かどうかを冷静に見極めましょう。
このポイントに当てはまる社員として、会社に不当な要求をしたり、家族を介入させてクレームをつけるといった場合もあります。
いずれにしても、まずは会社として、常識的な対応(指導や返答)をして、それでも見過ごせない程度に至っているかを見極めましょう。
4 モンスター社員の影響
モンスター社員の存在により、仕事の効率が低下することはもちろんですが、モンスター社員がいることで、職場の人間関係や職場の雰囲気を悪化させ、他の社員が気持ちよく働くことを妨げるという影響もあります。そうすると、他の社員の士気が下がり、他の社員が規律を守る意識を低下させたり、離職を招いたりすることになります。
5 放置は禁物
モンスター社員が及ぼす影響を考えると、放置は禁物です。あいまいな対応をしてしまうと、自分の言動に問題があるという自覚が乏しいモンスター社員は、「自分は悪くない」と思い込み、問題行動をエスカレートさせてしまいます。それだけではなく、モンスター社員の行動を指導したり、処分することなく放置すると、「この会社ではこの程度の問題行動は目をつぶられる」という実績を作ってしまうことになります。そうすると、同じような問題行動が繰り返されても、処分をしにくくなったり、より重大な問題行動が起きても、それが記録上は初めての問題行動になってしまうのです。
6 まとめ
問題のある社員がいる場合、会社としてまずとるべきアクションは指導をすることです。まずは、会社としてモンスター社員のラインはどこか確認し、どのような指導や懲戒処分をすべきか速やかに検討しましょう。