コラム

就業規則がないと解雇ができない? こんな会社で違法です!

就業規則は会社のルールブックといえるもの。 従業員10人未満の会社では必要ないんでしょ? と思われがちですが、今回は、従業員の人数に関係なく、就業規則がないとできない行為をご紹介します。もし、就業規則なしで行うと、その行為は違法となり、効力が認められなくなってしまいます。

1 懲戒・懲戒解雇

会社が従業員を懲戒する権利は、会社という組織の秩序維持のために、元々会社の権限として備わっているという考え方もあります。

ですが、懲戒というのは従業員にとって不利益な措置です。そこで、懲戒のような措置を課すためには、就業規則に明文化し、根拠を示さなければいけないとされています。就業規則に記載されている懲戒事由にあてはまらないのに、(いわば、明文にない懲戒事由にあてはめて)懲戒することはできないのと同じことです。

懲戒の事由、懲戒の種類(戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇)、懲戒の手続(調査→認定→告知聴聞→懲戒の言い渡し、懲戒を決定する人、懲戒委員会の設置 等)を就業規則に記載しなければ、懲戒はできません。また、細かく書きすぎたり、実施不可能な理想を書いてしまったりすると、手続き違反とされるので注意が必要です。

懲戒解雇でない普通解雇(長期欠勤やかなりの能力不足)は就業規則なしでも理屈上できますが、就業規則のルールなく、「正当な理由があって解雇した」と立証するのは難しくなります。普通解雇についても就業規則に解雇事由を規定するのが望ましいです。

2 残業の許可制

時間外労働は、本来必要最小限にとどめられるべきものとされているため、残業をするためには規定が設けられています。正確には、36協定(労働基準法36条に基づく労使協定)がないと、一切の残業は不可とされています。

残業とは、会社の定めた所定時間を超えて働かせることではなく、1日8時間を超えて働かせることをいいます。ですから、1日8時間を超えて働かせるためには、36協定の締結が不可欠なのです。

大体の場合、所轄労働基準監督署長へ就業規則の届け出をする時に36協定も提出するので、残業と就業規則はセットになっていることが多いです。

不要な残業や、勝手に残業するというようなことのないよう、従業員の勤怠管理を徹底する場合は、残業は事前の許可制にする必要があります。その際は、就業規則に残業の許可制について明記するのが望ましいでしょう。

3 休職

休職は、プライベートでの(労災以外での)病気やケガにより働けない時に、労働の義務を免除するための制度です。就業規則に定めがないと、休職にはできません。

休職は退職の猶予措置なので、会社としては絶対に設けておいた方がいいでしょう。

4 欠勤控除

欠勤控除とは、従業員が欠勤、遅刻、早退をした時に、その時間分の給与を差し引くことです。

欠勤控除に対する規定は労働基準法にはないため、してもしなくてもいい性格のものではあります。しかし、就業規則に定めがないと、欠勤控除はしないという意思になるため、欠勤控除をする場合は、必ず就業規則に欠勤控除に関するルールを明確に定めなければなりません。従業員に不利益を及ぼす措置をするためには、就業規則上の根拠が必要になるのです。

5 降格・減給

従業員は、働くにつれて経験や能力が増し、昇進や昇給するというのが一般的です。なので、法律上当然には降格や減給は予定されていません。降格は従業員の不利益になる場合も多いため、降格や減給をするには、就業規則に明記し、透明性を確保する必要があります。

その際、降格や減給の事由、能力の評価の規程(多くの場合は就業規則とは別冊で作成する)、能力評価の手順、等を定めた方がいいでしょう。

6 副業の許可制

現代の考え方では、副業は原則、可能とされています。プライベートな時間であり、副業をするかしないかは個人の自由だからです。ただ、日本では昔から副業禁止の風潮が根強く残っており、本業への影響を問題視し、副業禁止規定を設けているケースもあります。

疲労による職務への影響や企業情報の流出、同業他社への復職、会社の信用に関わる副業(私立の教員がホストをする等)は禁止できます。しかし、それをチェックするためには、副業を完全フリーにするのではなく、会社の許可制にしなければなりません。

なお、本職と復職の労働時間は通算して残業代を計算するので、きちんと復職での就業状況を届け出てもらわないと労働時間の管理が難しくなります。副業に関しても就業規則でルール化を明記することが求められます。

7 有給休暇の社内ルール

有給休暇は労働者としての権利であり、有給休暇自体は、法律上当然与えられるものです。

ですが、事前の届け出制や、欠勤の事後的な有給休暇への振替、半休の可否など、運用上のルールを作るためには、就業規則に定めておく必要があります。本来、給料の原則はノーワーク・ノーペイですが、従業員が有給休暇を取得する場合、給料が減額されることはありません。給料をもらいながら休暇を取得することができる有給は、従業員にとって関心が高いことの一つといえます。そのため、会社のルールが曖昧だと、一番トラブルになりやすいのです。

8 まとめ

就業規則がないと、いわば会社にルールがないことになります。従業員に「ルールを守れ」「守らないなら処分する」という対処をしなければいけない局面で、会社にルールの大元である就業規則がないと、何の対処もできなくなってしまいます。

就業規則はルール違反の抑止力として機能するばかりでなく、トラブル発生時の武器となります。

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