コラム

もしかして就業規則がないんですか? 作っていないと困る5つのパターン

今回は就業規則の盲点、パートタイマーや有期雇用といった非正規雇用の社員用の就業規則についてご紹介していきます。非正規雇用の割合が少ないという企業でも、無関係ではありません。今一度確認してみてください。

1 ないと困るパターン

正社員用の就業規則があっても、パートタイマーや有期雇用の社員用の就業規則がないことはよくあります。

パートタイマーとは、正社員に比べて1週間の勤務時間が短い人のことをいいます。時短勤務の人だったり、週3勤務の人だったり、時間帯や日数に制約のある人が選ぶ働き方です。

有期雇用とは、雇用期間が決まっている社員です。雇用期間の終わりが決まっているだけなので、仕事内容としては正社員と同じようなことをやっているパターンもあります。

非正規雇用の社員というと、バイトのように出勤もまばらで責任もなく、短期的に入れ替わってしまうため、福利厚生が全く必要ない場合もあれば、正社員と同じように働くようなキーマンとなっていて、正社員登用を予定して待遇を徐々に上げていく場合もあります。このように一言に非正規雇用といっても、企業によって実態はさまざまです。

そのため、自社の非正規雇用の社員の実態に合った就業規則を用意しておかないと、(1)休暇の有無、(2)賞与や昇進の有無、(3)福利厚生、(4)手当の有無があやふやになってしまいます。そして、有期雇用の社員がいる場合は、(5)無期雇用への転換の準備もしなければいけません。

2 正社員の就業規則をチェック

まずは、正社員用の就業規則をチェックしてください。そこで、その就業規則が適用される対象者が規定されていますので、正社員に限って適用することになっているかを確認します。この規定があいまいだと、非正規雇用の社員にも正社員と同じ就業規則が適用されることになります。

そして、就業規則の全般を眺めてみて、正社員だけを想定している規定と、非正規社員も含んだ全社員に適用するものとを、仕分けしてみましょう。この時、正社員だけを想定している規定が、非正規雇用の社員に適用されないようになっているかを確認します。例えば、非正規社員用の就業規則がないのに、雇用契約書には「就業規則による」と書かれてしまっていると、正社員用の就業規則のとおりの待遇になってしまいます。

次に、非正規社員に適用するかが問題となるものをご紹介します。

3 休暇

正社員を想定して、夏季休暇や特別休暇を設けている場合があります。これらは、フルタイムで働く正社員に対するねぎらいの目的で設けられている訳ですから、非正規社員に適用すべきかどうかを、非正規社員の実態を踏まえて検討しましょう。

たとえば、シフト制で短時間・週数日しか働かないパートタイマ―に対しては、このような休暇は必要なさそうです。反対に、有期雇用だけれど仕事内容が正社員と同様の場合には、休暇の適用が必要です。

4 賞与・昇進

非正規社員に賞与や昇進がない場合には、非正規社員用の就業規則にきちんと明記しましょう。非正規雇用の社員が対象外になっているという明確な表記がないと、賞与や昇進を実施しなければいけなくなります。

また、賞与や昇進の機会を全く与えなくていいのかどうかは、個々の企業での非正規社員の働きぶりを見て、十分な検討をしましょう。

勤務実態として、正社員と同等の働きをしているのに賞与を与えないでいると、「同一労働同一賃金」のルール違反になります。正社員、非正規社員で能力の向上が同一であれば、同一の昇給をしなければならず、会社に対する貢献度が同程度であれば、賞与の支給も同じようにしなければなりません。

5 福利厚生

家族手当や食堂の利用、健康診断の会社負担など、福利厚生については1つ1つ、非正規社員に与えない理由があるかどうかを検討しましょう。

福利厚生の多くは、会社に定着して長く働いてもらうためのものですから、非正規社員であっても長年勤めている人がいるような実態があれば、非正規社員にも実施するべきでしょう。

また、食堂などの会社施設の利用は、一人一人に利用させるためにかかるコストはごくわずかなものですから、非正規の社員にも分け隔てなく利用させるのが基本となるでしょう。

6 手当 

正社員に支払っている手当と同じ手当を非正規社員にも支払うかどうかは、「同一労働同一賃金」のルールにかかわります。このルールは、同じ働きをしているなら、正規・非正規にかかわりなく、同じ待遇にしなさい、というものです。同一労働同一賃金に反する給与体系は認められないので、違反していた場合には、非正規社員にも正社員と同じ待遇にしなければいけません。

同一労働同一賃金の違反になるかは、その会社での非正規社員の働きぶり、位置づけ(すぐ辞めていくのか、欠かせない戦力なのか)によっても変わってきます。整理するためには、(1)手当がどういう意義で支給されているのかを検討して、(2)それが自社の非正規社員にも当てはまるのかを検討してください。

そのためには、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」が参考になります。

例えば、通勤手当は、通勤のための実費を補填するために支給されているもので、正社員と非正規社員の仕事内容の違いがあるとしても、通勤のために必要になる交通費の大小が変わるわけではないので、同じ支給基準にしなければいけないと考えられています。

7 無期転換

有期雇用の社員には、「無期転換ルール」があります。かんたんに言うと、更新をしながら有期雇用が5年を超えると、その有期雇用の社員には「無期雇用に変えてくれ」といえる権利ができるのです。会社に拒否権はなく、その社員が希望をすれば、必ず無期雇用に変えなければいけません。

このルールにより、一つの会社に貢献し続けているベテラン非正規雇用者が、会社の一方的な都合で雇止めになるようなことが大幅に減ります。

しかし、無期雇用にしたときに、どのような労働条件になるのかがあいまいになるという新たな問題が生じることになりました。

例えば、今まで昇給無しの有期雇用で働いていたのなら、無期雇用になってからも昇給がないのか、ということが疑問に残ります。「無期転換ルール」は有期雇用社員を無期雇用社員にせよ、と言っているだけなので、正社員並みの待遇を与えよということまでは言ってないのです。無期雇用になった後にどのような待遇にするのかは、会社がきちんと決めておかないといけないのです。会社が決めていいといっても、同じ働きをしているのに、正社員よりも低い待遇にするような差別は許されません。

自分の会社の有期雇用社員の働きぶりや責任の大きさを検討して、無期雇用に転換した時にはどこまでの待遇を与えるのかを、実態を見て決めていきましょう。

まとめ

働き方が多様化し、企業の非正規雇用の割合は、過去30年で倍増しています。それに伴い、非正規雇用者の待遇見直しを図る動きもありますが、就業規則等、正社員向けに整備されていない企業が多く見受けられます。

まだ就業規則がないという場合、この機会に自社の実態に合った、非正規雇用者向けの就業規則の作成に取り組まれることをお薦めします。また、非正規雇用者向けの就業規則を設けている場合も、作成から年数が経過していると、時代にそぐわないものがある可能性があります。今一度見直しをしてみるといいでしょう。

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